「妊娠の新規患者が減っている」という課題について、アクセス解析と広告配信の実データで検証しました。結論から申し上げると、需要は落ちていません。落ちているのは、その需要を予約に変える通過率です。
比較の基準:全ての数値は「各月1日〜19日」の同一19日間で集計した実数です。8月がまだ経過中のため、月全体の合計や日平均ではなく、どの月も同じ19日間に揃えています。
新規患者の「需要」は落ちていません。落ちているのは、需要を予約に変換する通過率です。
仮説2 ——「新規患者は落ちていないが、予約システムの変更で新規予約が取れないでいる」—— を、Web上の数値は明確に支持します。仮説1(新規患者そのものの減少)は支持されません。
ただし、予約システムとは独立した第二の要因が併存しています。同じ予算でGoogle広告のクリックが6割減っていることです。入口が細くなり、その先の通過率も半減しました。
まず、そもそも人が来ているのかを確認します。各月1〜19日で揃えると、サイト全体のセッションは2月24,159件、8月23,004件(▲4.8%)。新規セッションに限れば15,366件 → 16,486件で +7.3% と増えています。
なぜ「各月1〜19日」で比べるのか。8月はまだ経過中のため、月の合計をそのまま2月と並べると8月が不当に小さく見えます。日平均に直す方法もありますが、月ごとの曜日構成の差が残ります。そこで本レポートはどの月も1日〜19日の19日間に固定し、実数のまま比較しています。
お盆の影響も確認済みです。8月1〜19日はお盆期間を含みますが、お盆のない7月1〜19日でも同じ結論が出ています(産科ページ到達1,473件・予約システムへ225件・通過率15.3%)。季節要因では説明がつきません。
GA4管理画面の見え方にご注意ください。6月以降「新規ユーザーが急増」して見えますが、これは実体ではありません。新予約システムのドメイン yoyaku.atlink.jp が別ドメインとして計上され、そこへ移動した方が全員「新規ユーザー」として二重カウントされているためです(第5章)。本レポートの数値はその分を除外した実数です。
/medical/obgyn/(産婦人科)と /medical/guide/(出産について)に到達したセッション数を、流入経路別に分けたものです。
産科ページに到達したセッション数
経路別 · 各月1〜19日の実数
| ページ | 2月 | 4月 | 6月 | 7月 | 8月 | 2月比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| /medical/obgyn/ 産婦人科 | 1,435 | 1,218 | 1,454 | 1,246 | 1,104 | ▲23% |
| /medical/guide/ 出産について | 1,788 | 1,691 | 1,732 | 1,779 | 1,534 | ▲14% |
| /medical/obgyn/plan/ 分娩プラン | 1,143 | 1,217 | 1,348 | 1,135 | 1,121 | ▲2% |
| /medical/obgyn/mutsu/ 無痛分娩 | 791 | 859 | 989 | 767 | 773 | ▲2% |
| /medical/obgyn/prenatal_test/ 出生前検査 | 459 | 437 | 593 | 620 | 527 | +15% |
| /reservation_status/ 分娩予約状況 | 986 | 915 | 1,392 | 961 | 731 | ▲26% |
| /reservation/ 予約について | 1,802 | 5,047 | 4,908 | 4,305 | 3,536 | +96% |
| /medical/gyn/ 婦人科 | 1,868 | 1,776 | 1,616 | 1,494 | 1,369 | ▲27% |
各月1〜19日のページビュー数。産科ページは1〜2割減っていますが、これは上でみた広告流入の減少で説明がつく範囲です。分娩プランと無痛分娩はほぼ横ばい(▲2%)、出生前検査は増加しています。「予約について」ページはむしろ倍増しています——4月の導線変更で、全ページからここに集約されたためです。
コンバージョン数は6月の計測変更で定義が変わり、前後比較ができません。一方、「サイトから外部予約システム(旧ドクターキューブ/新@link)へのリンククリック」は前後で同じ計測方法です。これで比較します。
本レポートでは2つの通過率を使い分けています。混同しないようご注意ください。
① 全体の通過率(26.5% → 14.0%) 産科ページを見た新規訪問者のうち、サイト内のどのページからでも予約システムへ移動した割合です。「予約について」ページ経由に限りません。2月時点ではトップページや各診療ページからも直接飛べていたため、それらを全て含みます。
② 予約ページからの通過率(62% → 42%) こちらは /reservation/「予約について」ページに到達した新規訪問者のうち、予約システムへ移動した割合です。ページを1枚に限定した見方です。
①が「新患が予約システムに辿り着けた総量」、②が「予約ページ自体の効き具合」を示します。①②どちらも同じように落ちています。
新規訪問者は、入口までは来ている。その先で半分が消えている
セッション数 · 新規訪問者のみ · 各月1〜19日の実数
/reservation/ ページに到達した新規訪問者のうち、予約システム(旧ドクターキューブ/新@link)へ進んだ割合です。
「予約について」ページ → 予約システムへの通過率
新規訪問者 · 各月1〜19日
「広告が減ったから、質の高い流入が減っただけでは」という説明が成り立つか、経路を固定して検証しました。産科ページに到達した新規訪問者の、予約システムへの通過率です。
| 経路 | 2月 | 4月 | 6月 | 7月 | 8月 | 2月比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 自然検索 · 新規 | 20.6% | 15.5% | 13.3% | 13.4% | 12.9% | ▲37% |
| Google広告 · 新規 | 35.6% | 35.4% | 23.2% | 22.3% | 18.0% | ▲49% |
どちらの経路でも同じように落ちています。流入の質が変わったのではなく、サイトと予約システムの側で起きた変化です。
新予約システム@linkは、予約の前に「ご利用登録」が必須です。GA4に記録されている@link内のページ遷移から、その完走率を実測しました。
| 各月1〜19日 | 登録開始 (規約同意) | 情報入力 | 確認画面 | 登録完了 | 完走率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 6月 | 1,087 | 428 | 401 | 397 | 36.5% |
| 7月 | 903 | 422 | 399 | 407 | 45.1% |
| 8月 | 681 | 356 | 332 | 324 | 47.6% |
セッション数。登録を始めた方の半数以上が、登録を終える前に離脱しています。登録完了数そのものも 397 → 324件へ減り続けています。
上の表で落ちているのは、ほぼ全て登録開始 → 情報入力の間です(8月で通過52.3%、6月は39.4%)。その先の情報入力 → 確認 → 完了はほぼ全員が通過しています。つまり問題はフォームの長さではなく、その手前にあります。
この1段目は、長い利用規約への同意画面で、その先に空メール送信によるメール認証があります。実際に「空メールが送信できない方」「メールが届かない方」のヘルプページには、6〜8月で計487セッションが到達していました。
この手順は、予約ページ上でも次のように案内されています。
空メールの送信、受信メール内URLのクリック、そしてiCloudメールでは届かないという制約。この3つを越えられた方だけが次の画面に進めます。実測の通過率39〜52%は、この難所の大きさをそのまま表しています。
この数値の測り方。予約システム内のページにも計測タグが設置されているため、登録画面の遷移が1画面ずつ記録されています。上表は「登録開始(規約同意)」「情報入力」「確認」「完了」の各画面に到達したセッション数です。画面がこの順序で表示されていることは、実際の閲覧順を測定して確認済みです。診察券をお持ちの方の再登録は別の画面群を通るため、除外しています。
予約メニューのURL yoyaku.atlink.jp/katocl/resv に未ログイン状態でアクセスすると、本日実測で次の画面が返りました。
初めての方は、どんな予約枠があるのか・空いているのかを見ることすらできません。「まず登録してください」と言われて終わります。旧ドクターキューブでは登録なしで空き枠を見て予約できていました。新患にとってのハードルの差は非常に大きいものです。ログイン画面までは19日間で2,218〜3,054セッションが到達しており、そこから引き返している方が相当数います。
予約システムへのクリックが、どのページから発生していたかです(クリック回数)。
| 発生元ページ | 4月1〜19日 | 8月1〜19日 |
|---|---|---|
| /reservation/ 予約について | 2,018 | 1,106 |
| / トップページ | 566 | 0 |
| /medical/guide/ 出産について | 107 | 0 |
| /medical/gyn/ 婦人科 | 55 | 0 |
| /medical/obgyn/ 産婦人科 | 10 | 0 |
| /reservation_status/ 分娩予約状況 | 7 | 0 |
本日ソースを確認したところ、トップ・産婦人科・出産について・分娩予約状況のいずれも、予約ボタンのリンク先が /reservation/ に変わっていました。以前は各ページから直接予約システムへ飛べていたものが、「予約について」ページを1枚挟む形になっています。トップページからの直接導線だけで、4月は19日間に566回使われていました。
| 各月1〜19日 | 表示回数 | クリック | 費用 | クリック単価 |
|---|---|---|---|---|
| 2月 | 57,382 | 5,787 | ¥167,475 | ¥29 |
| 3月 | 54,542 | 5,125 | ¥153,681 | ¥30 |
| 4月 | 46,817 | 5,248 | ¥158,295 | ¥30 |
| 5月 | 30,681 | 1,788 | ¥105,304 | ¥59 |
| 6月 | 29,505 | 1,680 | ¥70,481 | ¥42 |
| 7月 | 55,809 | 2,115 | ¥150,977 | ¥71 |
| 8月 | 52,378 | 2,121 | ¥236,891 | ¥112 |
同じ19日間の比較です。2月と8月で、費用は ¥167,475 → ¥236,891(+41%)と増えているのに、クリックは 5,787 → 2,121 回(▲63%)。クリック単価が ¥29 → ¥112 と3.9倍になっています。これが第1章でみた「広告経由の産科ページ到達 ▲57%」の直接の原因です。
8月の日別費用です。月前半は1日 ¥7,000〜¥13,000 で推移していましたが、8月14日以降に跳ね上がっています。
| 日付 | クリック | 費用 | クリック単価 |
|---|---|---|---|
| 8月4日 | 108 | ¥10,995 | ¥102 |
| 8月8日 | 76 | ¥6,651 | ¥88 |
| 8月13日 | 96 | ¥10,085 | ¥105 |
| 8月14日 | 153 | ¥21,119 | ¥138 |
| 8月15日 | 133 | ¥16,510 | ¥124 |
| 8月16日 | 217 | ¥27,394 | ¥126 |
| 8月17日 | 185 | ¥25,472 | ¥138 |
| 8月18日 | 168 | ¥15,827 | ¥94 |
19日間で ¥236,891 を消化しており、これは例月の1か月分(¥222,000〜¥243,000)にすでに達しています。このままの推移だと8月は月 ¥37万前後になる見込みです。意図した増額でなければ、日予算と入札設定の確認をおすすめします。
新規訪問者の産科ページ到達は、同じ19日間で 1,476 → 1,448 件とほぼ同数(▲1.9%)。自然検索経由に限れば 1,494 → 1,649 件と +10.4% 増えています。市場の需要は縮んでいません。
同一定義で測れる通過率が 26.5% → 14.0% に半減。経路を固定しても同様に低下します。利用登録の完走率は36〜48%で、脱落はほぼ全て「規約同意+メール認証」の1段目で起きています。
「予約の取り方が変わり、再診ばかりで新規患者獲得の受入ができていない」という見立ては、Web上のデータと整合します。@linkはログイン前提の設計で、すでに登録済みの方(=再診)には快適に、初めての方には高い壁として機能しています。
ただし、もう一つ独立した要因が併存します。入口が細くなり(広告クリック▲63%)、入口から先の通過率も半減した(26.5%→14.0%)——この2つが重なって、新規予約に届く人数が大きく減っています。
1〜4は追加費用0円で実施できます。とりわけ1と2は、最も多くの方が脱落している一点を直接ふさぐ施策です。効果の大きさに対して着手コストが小さいため、まずここからをおすすめします。
正確を期すため、明示しておきます。